「テストエンジニアはやめとけ」– ネットでそんな言葉を見かけたことはありませんか?
これからキャリアを積もうとしている若手テストエンジニアの中には、
- 「本当にこの仕事を続けていいのか?」
- 「将来性はあるのか?」
- 「他のエンジニア職に転職すべきでは?」
と不安に感じている人もいるでしょう。
確かに、テストエンジニアには厳しい現実があり、ネガティブな意見も少なくありません。しかし、それは「正しいキャリア戦略を知らない」ことが原因であることが多いのです。
本記事では、なぜ「やめとけ」と言われるのか、その理由を整理し、テストエンジニアの現状と市場動向を分析します。そのうえで、どのようなスキルを身につければ収入を向上させられるのか、単調な業務から抜け出してやりがいを持てる仕事にシフトする方法、そして開発チームと連携しながらキャリアを成長させる戦略を具体的に紹介します。
目次
1. テストエンジニアの厳しい現実:なぜ「やめとけ」と言われるのか?
① 年収が低めで昇給しづらい
テストエンジニアの平均年収は、他のエンジニア職と比較すると低めで、昇給のスピードも遅い傾向にあります。
職種 | 平均年収 | 生涯年収 |
---|---|---|
デバッグ/テスター | 387万円 | 2億2,015万円 |
SE/プログラマ | 425万円 | 2億3,113万円 |
Webエンジニア | 446万円 | 2億5,497万円 |
ネットワークエンジニア | 447万円 | 2億7,060万円 |
スマホアプリ/ネイティブアプリ系エンジニア | 476万円 | – |
セキュリティエンジニア(脆弱性診断/ネットワークセキュリティ) | 477万円 | – |
システム開発/運用 | 489万円 | 2億5,215万円 |
技術系(IT/通信)全体 | 462万円 | 2億6,164万円 |
「スキルが身につかないまま低年収で停滞するのでは?」と不安になる人も多いでしょう。
また、給与が低くなる要因の一つとして、テストエンジニアの仕事が一部アウトソーシングされることが増えている点も挙げられます。近年、日本国内のIT企業の多くがコスト削減のために、品質保証業務を海外のテスト専門会社に委託するケースが増えています。例えば、インドやベトナムなどのテストアウトソーシング市場は年々拡大しており、国内企業がコスト面で競争力を確保するために積極的に活用しています。その結果、正社員のテストエンジニアの需要が減少し、給与の伸び悩みが発生しているのが現状です。
さらに、年収を上げるためには市場価値を高めるスキルが必要不可欠です。テストエンジニアが年収を向上させるためには、専門的な知識とスキルを強化し、付加価値の高い業務へとシフトしていくことが求められます。
② 業務が単調でやりがいに欠ける
多くの現場では、与えられたテストケースをひたすら実行するだけの“作業”になりがちです。例えば、ある企業では、新人テストエンジニアが1日中同じアプリの画面遷移テストを繰り返し、エラーが出ないかを確認するだけの業務を担当させられることがあります。また、開発チームからの指示を受けて単純なチェックリストをこなすだけのケースも多く、手動での入力作業がメインとなるため、技術的な成長を感じにくい環境になりがちです。
テスト業務にはクリエイティブな側面もありますが、それを活かすためには、自ら提案を行い、改善を図る姿勢が重要になります。例えば、テスト設計や品質分析に関与することで、より戦略的な業務にシフトできる可能性があります。
③ 裁量権が小さい割に責任が重い
テストエンジニアは開発の最終工程を担当することが多く、仕様がすでに決まっているため、テストのやり方を大きく変えられないケースが少なくありません。それにもかかわらず、バグの見逃しがあれば品質問題につながり、責任を問われることになります。
このような状況を改善するためには、開発プロセスの初期段階からテスト計画に関わり、仕様レビューの段階で品質保証の視点を取り入れることが重要です。また、開発者とのコミュニケーションを強化し、テスト工程がプロジェクト全体の成功に貢献する役割であることを周囲に理解してもらうことも有効です。
2. テストエンジニアが生き残るためのキャリア戦略と成功の道
テストエンジニアがキャリアを切り開くためには、スキルの習得だけでなく、実務経験の活かし方や職場での立ち回り方も重要です。ここでは、収入向上、業務のやりがい、職場での影響力向上の3つの視点から具体的な解決策を整理します。
① 収入UPの方法:スキルを身につけて市場価値を上げる
収入を向上させるには、テストエンジニアとしてのスキルを深めるだけでなく、開発側やマネジメントに関与する視点を持つことも重要です。例えば、テスト自動化のスキルを習得することで、単純作業の割合を減らし、効率的にテストを実施できる環境を構築できます。
また、QAエンジニア・テストアーキテクトへのキャリアアップを目指すことで、より高度な品質管理や戦略的なテスト計画に関与することが可能になります。そのためには、JSTQB資格やソフトウェア品質技術者資格(JCSQE)の取得も有効です。
さらに、裁量を増やすためには、開発チームとの連携を強化し、テスト計画の提案を積極的に行うことが重要です。テスト自動化の導入を推進することで、業務効率を上げつつ、エンジニアとしての価値を高めることができます。
② やりがいのある業務にシフトする
業務にやりがいを感じるためには、受け身の姿勢ではなく、自ら業務改善や品質向上に関与する意識が求められます。具体的には以下のような取り組みが有効です。
まず、探索的テストを取り入れ、柔軟なテスト手法を学ぶことで、より創造的な業務に関われるようになります。さらに、テストケースの作成やテスト戦略策定に積極的に関与することで、プロジェクト全体に影響を与えるポジションを確立できます。
また、働きやすい環境をつくるためには、長時間労働を避ける交渉スキルを身につけることが大切です。テストエンジニアの価値を社内に広めることで、テスト業務の重要性を認識してもらい、適正な工数の確保やスケジュール調整がしやすくなります。
③ 周囲からの評価を上げる
職場での影響力を高め、評価を向上させるには、開発者と協力し、プロジェクトの品質向上に貢献する姿勢を示すことが重要です。例えば、バグの傾向を分析し、開発者にフィードバックを行うことで、問題の早期発見に貢献できます。
また、外部発信を積極的に行うことで、自身のスキルをアピールすることも効果的です。ブログやSNSでテスト技術について発信し、業界内での認知度を高めることで、キャリアアップのチャンスが広がります。
3. 今日から始めるキャリアアップの第一歩
テストエンジニアとしてのキャリアアップは、日々の積み重ねによって実現できます。ここでは、今すぐに取り組める具体的なステップを紹介します。
- スキルアップを始める
- テスト自動化の基礎を学び、SeleniumやCypressなどのツールを試す。
- ソフトウェアテストに関する資格(JSTQBなど)を取得する計画を立てる。
- 開発スキルを向上させるためにPythonやJavaなどの言語を学ぶ。
- 業務の質を向上させる
- 手順通りにテストを実施するだけでなく、テスト設計や改善提案を行う。
- 開発者とのコミュニケーションを増やし、テストの影響範囲や品質保証の視点を共有する。
- チームのテストプロセスを効率化する方法を考え、提案する。
- 社内外での影響力を高める
- 社内勉強会や技術共有の場で積極的に発言し、知識を広める。
- 自分の学んだことをブログやSNSで発信し、業界内での認知度を高める。
- 他のテストエンジニアやQA担当者と交流し、情報交換を行う。
- キャリアの方向性を明確にする
- 5年後、10年後にどのようなポジションに就きたいかを考え、必要なスキルや経験を逆算する。
- テストマネージャーやQAエンジニア、テストアーキテクトなど、キャリアの選択肢を検討する。
- 転職市場の動向をリサーチし、求められるスキルセットを把握する。
「テストエンジニアはやめとけ」と言われる理由は確かに存在します。しかし、それはキャリアの選び方によるものが大きいのです。
適切なスキルを身につけ、業務範囲を広げることで、高収入&やりがいのあるキャリアを築くことは可能です。
今の仕事に不安を感じている方は、ぜひ今日からキャリア戦略を考え直してみてください。